世界中であらゆるフラットトップギターの基準ともなっている"D-28"。お馴染みの外観になったのは1934年のこと。細かな仕様変更を何度も繰り返しながら現在まで製造を継続しているワールドスタンダードのモデルです。その長い歴史の中で、1944年で廃止されたスキャロップブレイシングを1976年に復活させたモデルがこの"HD-28"。本器は1996年製のUSED品。スプルーストップ、インディアンローズウッドサイド&バック、マホガニーネック、エボニー指板&ブリッジ、グローバーペグ、べっ甲柄ピックガード、ヘリンボーントリム、スキャロップドXブレイシング、Schatten社製HFN Artist Plus 1搭載。型番にも付けられているHはHerringbornの頭文字を取ったネーミング。当時のD-28をベースとし、戦前期の象徴であるヘリンボーンやスキャロップドブレイシングを導入。発売当初はブラックピックガードでしたが、この時期にもなるとピックガードもべっ甲柄のモノを採用。ヴィンテージのようなルックスにグッと近づいています。ナット幅は現行品とは異なり42.9mm幅。親指で握り込んだ演奏スタイルにも対応しやすく、現行品のナット幅が広いと感じられている方にはうってつけのグリップです。また本器はブリッジピンをマーチンが近年発売したリキッドメタルに交換されています。リキッドメタルはジルコニウムをベースにした合金。製造の際に急速冷凍することで原子構造をアモルファス(非昌質)という状態にし、ガラスとも金属とも言えるような特性へと変化します。硬度が高く頑丈で衝撃やキズに強い、且つしなやかな柔軟性も兼ね備えているためエネルギーの反射を行う性質を持ちます。これらの特性から、より金属的な高音やサスティーン、ピッキングからの立ち上がりの速さを生み出してくれる現代の最新技術の詰まったブリッジピンです。当時のD-28と比較するとスキャロップブレイシングによって空気感の強い、ふくよかな響きを獲得。現行品のHD-28と比較するとブレイシングの位置が異なりフォワードではないため、やや芯の強く輪郭を出しやすい締まったサウンド。太くパンチ感のあるトーンを生み出してくれます。ワールドスタンダードの1つでもあるため、トーンバランスも優れており癖のない扱いやすさ。上述のブリッジピンの影響かサスティーンも長め、金属的で華やかな高音が心地よく響きます。演奏ジャンルを選ばずに使えるという点もありがたいところ。後付けにてSchatten社製HFN Artist Plus 1を搭載。ブリッジプレートにぶら下がるように取り付けられたアーチ状のピックアップ。重量は7g程と非常に軽量で生音への影響も僅かです。エアリーにボディの振動を拾い上げてくれ、ナチュラルなサウンドをアウトプット。1Volのコントローラでシンプルに扱いやすいピックアップシステムです。バインディング修正の跡がボディトップ1弦側くびれとボディバック6弦側くびれ箇所に見られますが、現在では修正済みで問題なく使用することが出来ます。ブリッジ上部、サウンドホール側の塗装が若干浮いていますがこちらも使用する上で問題がある状態ではございません。その他にはボディサイド下部に細やかな当てキズ、トップ面下部にも細やかな当てキズが数か所、ネック裏には細やかな擦りキズと僅かな当てキズ、サウンドホール6弦側にピックでの演奏で付いた弾きキズ、ボディ表面の薄い擦りキズが見られますが、年式を考えるとキレイなコンディションをキープされている個体。ネックの状態も良く、サドル残りも若干ですが残し、現代的な演奏性をしっかりと保たれた1本。若干の使用感こそ感じられますが、手入れをしつつ使ってきたことが窺えるHD-28。現行品とは異なった仕様のため現行品が合わなかったという方には是非一度試して頂きたい個体です。
オリジナルハードケースが付属します。
Condition:EX++
Top:Solid Sitka Spruce
Side:Solid East Indian Rosewood
Back:Solid East Indian Rosewood
Neck:Mahogany
Fingerboard:Ebony
Bridge:Ebony
Fingerboard Inlay:Dots(MOP)
Rosette:White&Black
Binding:Ivoloid&Herringbone
Machine Heads:Grover/Chrome
Pick Guard:Tortoise Color
Pick up:none
Nut width:42.9mm
Scale:645.2mm
Case:Original Hard Case