等張食塩水が喉に与える効果
Vocal Mistが推奨する声帯に良いとされる特定の等張食塩水(アイソトニック・セイリーン- 0.9% NaCl)があり、これについての研究が広く行われています。
最近の研究結果によると、NEBULIZERを使ってアイソトニック・セイリーンを吸引することで、Phonation Threshold Pressure (PTP)<発声閾値圧力(ハッセイ・イキチ・アツリョク)>とPerception of Phonatory Effort (PPE)<発声努力の認知>を抑え、その結果、発声をする際に、余分な圧力がかからないようになります。
無駄な圧力がかからない、ということは、発生時に喉への無駄な力を抑え、歌う頻度が多い時にも、喉の腫れを防ぎ、喉の回復を早めます。
・「乾燥した空気や、脱水状態になる前に、予めウルトラ・ソニック・ネブライザーでアイソトニック・セイリーンを吸引するのが、理想的な発声にとって一番効果があります」<2016年 ブリガム・ヤング大学 Hansen>
・「健康的な喉の機能を維持するには、声帯を水分で潤すことが大切です。声帯の表面液は粘膜を守り、スムーズな声帯振動を促します。特にシンガーは、喉の過酷な使用と環境により、乾燥が原因の喉の危険にさらされています。ですので、喉がきちんと水分で潤されていることに気を配り、それを維持することが理想的な発声にはとても大切なのです」(2014年 ブリガム・ヤング大学 Robert Brinton Fujiki )
・「シンガーのように、声のお仕事をされている方は、健康で最適な声帯を維持し、脱水や乾燥による喉のリスクに気をつける必要があります。例えば頻繁な飛行機の移動やホテル滞在、不規則な出演スケジュールと、出演会場を移り変わることで、脱水に関連した喉の危険リスクが非常に高まります。ネブライザーを使用してアイソトニック・セイリーンを吸引することで、喉頭潤滑剤(コウトウジュンカツザイ)として働き、声帯の表面を保湿して守る役割が期待できます。この研究はとても大切な意味合いがあります。シンガーの声帯は、常に高いレベルでのパフォーマンスが要求される為、もし声帯装置が最適な形で機能していない場合は、それが喉の問題につながる危険性が非常に高いのです」(2014年 ブリガム・ヤング大学 Robert Brinton Fujiki)
・この研究成果によって判ったのは、ネブライザーで霧状化されたアイソトニック・セイリーンは、歌手の喉が乾燥した空気にさらされることによって生じる負の症状に対して、即効性のある処置が可能だということです。アイソトニック・セイリーンは喉頭潤滑剤となり、声帯の表面液の粘度を抑え、その結果として発声時の無駄な力を抑制し、声帯の振動が効果的に行われるようになります」(2010年 ユタ大学 Kristine Tanner )
・「シンガーは、喉の乾燥を含む声帯への健康リスクが高いと考えられます。頻繁な飛行機の旅、不安定なスケジュール、移り変わる会場、環境の変化に伴う湿度の変化、喉の故障や疲れがある時にも喉を使い、喉頭咽頭還流の発症など、リスク原因はたくさんあります。今回の研究結果により、霧状のアイソトニック・セイリーンは、シンガーの喉頭の乾燥に伴う危険を覆す役割が期待されます」(2010年 ユタ大学 Kristine Tanner )
・「浸透性の声帯表面の保湿は、 声帯の健康と効率性を改善すると考えられます。喉の振動に対する無駄な力を抑え(保湿によってPTP<発声閾値圧力>を低下させること)、それによって流体圧力の蓄積を抑え、喉に対するダメージを和らげます。これは、声帯装置領域に適度な保湿を促すことで、発声機能をより継続的にサポートする、という発見と一致する考え方です」(2011年 言語聴覚士、聴覚療法士 博士号 Mahalakshmi Sivasankar)
・「声帯の乾燥は、口呼吸、エクササイズ、汚染された空気など、環境的そして行動的要因によって起こります。その他にも保湿機能低下、感情的要因、そして老化が原因となって、声帯の乾燥は起こります」(2008年ブルックリン大学 Ciara Leydon)
・「霧状アイソトニック・セイリーンは、患者さんに対する音声重症度を計る音響テストにても、発声の改善がみられます」(2015年ユタ大学 Kristine Tanner )
・「セイリーン0.9%配合溶液で喉を潤った教師の声の質に改善がみられました」(2017年 バイーア連邦大学 mile Rocha Santana )
研究では、霧状化された水を使っても、Perception of Phonatory Effort (PPE)<発声努力の認知>の低下が確認されました。シンガーたちは水の処置でも歌が楽になったと説明します。しかし霧状化された水ではPhonation Threshold Pressure (PTP)<発声閾値圧力>の改善は見られません。声というのは、多くの筋肉を使う複雑な機能によって発声される為、まだ発見されていない機能的原因があると思われます。霧状処置に加えて、シンガー自身による自己発見と努力によって喉が改善される余地があります。